栄養

食が細くなった高齢の親に少ない量で栄養をとる食事の工夫

池田実咲

「最近、親の食が細くなってきた」「ご飯を残すことが増えて心配」と悩んでいませんか。高齢になると、食欲の低下や噛む力、飲み込む力の変化などによって、食事量が減ることがあります。

食事量が減った状態が続くと、エネルギーやたんぱく質などの栄養が不足し、低栄養につながる可能性があります。

そのため、一度の食事で無理に多く食べるのではなく、少ない量でもエネルギーやたんぱく質などを補いやすくする工夫が大切です。

料理に栄養を補いやすい食品を加えたり、食事だけでは不足しそうな分を間食で補ったりする方法があります。

この記事では、高齢の親が少ない量でも必要な栄養を補いやすくする食事の工夫と、食事量が減ったときに確認したいポイントを解説します。

高齢の親の食事量が減る原因と低栄養のリスク

高齢の親の食事量が減る背景には、噛む力や飲み込む力の低下があります。義歯の不具合や薬の副作用、生活環境の変化も食事量の減少につながる要因です。

食事量が少ない状態が続くと、エネルギーやたんぱく質が不足し、低栄養につながるおそれがあります。低栄養はフレイルの重要な要因であるため、食事量が減ったときは早めの原因確認が重要です。

食欲低下を引き起こす身体面と生活面の要因を把握する

高齢者の食事量が減る背景には、身体的な変化と生活環境の変化があります。

身体的な変化として、噛む力や飲み込む力が低下すると、硬いものや食べにくいものを避ける傾向があります。

歯の欠損や義歯の不具合、唾液分泌の低下も食べにくさにつながる要因です。また、薬の副作用によって食欲が低下することもあるのです。

生活環境の変化として、一人で食事をする機会が増えることで、会話しながら食べる機会が減り、食事への関心が薄れることがあります。その結果、食欲や食事量が低下してしまうのです。

また、行動範囲が狭くなると買い物や外出の機会も減少しやすい傾向です。その結果、身体を動かす機会が減り、空腹を感じにくくなり、食事量の減少につながります。

このように複数の要因が重なると、食事内容が偏り、食事量が徐々に減少します。

低栄養とフレイルの悪循環を防ぐ

低栄養状態になると、身体を維持するために蓄えられた筋肉や脂肪が使われ、体重が減り、筋力が落ちます。

筋肉量が減少すると身体機能が低下し、日常の動作や歩行が困難になるフレイルと呼ばれる虚弱状態へと移行するケースも少なくありません。フレイルになると活動量が低下し、さらに食事量が減る悪循環に繋がりやすくなります。

そのため、食事量が減少したと気づいた段階で、原因や体重の変化を確認しましょう。

食事量の減少と体重変化を確認する

以前は全量食べていたのに、最近は食事を残すことが増えた場合は、普段の食事量だけでなく、体重の変化も確認しましょう。

食事量が少ない状態が続くと、必要なエネルギーやたんぱく質が不足し、体重が減少することがあります。特に、食事量を意図的に減らしていないにもかかわらず、体重が減っている場合は栄養不足に繋がっている可能性があります。

そのため、親の体重を定期的に確認し、食事量の変化とあわせて記録しておくことが大切です。記録しておくと、食事量と体重の変化を把握しやすくなり、食事量が減った状態が続いていることにも気づきやすくなります。

少ない量でもエネルギーとたんぱく質を効率よく摂る工夫

食が細くなった高齢の親は、食事量が減ることでエネルギーやタンパク質が不足する可能性があります。そのため、食事量を無理に増やすのではなく、少ない量でも栄養を補える食事を考えることが重要です。

調理では、料理に油脂類を加えたり、高たんぱく食材を組み合わせたりする方法があります。主食も調理方法や組み合わせを変えることで、少ない量で栄養を補う工夫につなげられます。

油脂類を活用して料理の容積を変えずに高エネルギー化する

食事量が減った高齢者には、料理の量を増やすだけでは食べきれない場合があります。そこで、料理の量を大きく変えずにエネルギーを補う方法として、油脂類を加えてみましょう。

脂質は1gあたり約9kcalのエネルギーを生み出す栄養素です。そのため、植物油やバター、マヨネーズなどを料理に加えることで、料理の量を増やさずにエネルギーを補う方法が考えられます。

参考:厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2025年版)』策定検討会報告書

例えば、味噌汁にごま油を加えると料理の量を大きく変えずに油脂類を取り入れることができます。また、おひたしにはマヨネーズを添えたり、ポタージュには生クリームやバターを加えたりするのもおすすめです。

普段の料理に取り入れやすい方法から試すと、食事量を増やさずにエネルギーを補う工夫につながります。

高たんぱく食材をトッピングして栄養価を高める

高齢者の栄養では、エネルギーだけでなく、たんぱく質の不足にも注意が必要です。肉や魚などの主菜を十分に食べられない場合は、普段の料理にたんぱく質を含む食品を加えてみましょう。例えば、おかゆやうどんに卵や豆腐、納豆を加えたり、和え物やスープにきな粉やスキムミルクを取り入れたりすると、料理を大きく変えずに食品を追加できます。

料理に加えやすい食品と取り入れ方の例は、次の通りです。

料理 加える食品の例 取り入れ方
和え物きな粉・すりごま仕上げに加える
スープスキムミルクスープに溶かす
おかゆ卵・豆腐・納豆一緒に組み合わせる
うどん卵・豆腐・納豆具材として加える
料理サケフレーク仕上げに加える
料理粉チーズ仕上げに加える
料理天かす仕上げに加える

このように、普段の料理に少量の食品を加えることで、食事量を大きく変えずに少量でもたんぱく質を補えます。ただし、食べる量が少ない場合は、追加する食品だけで必要な栄養量を補えるとは限りません。

主食の調理法を変えてエネルギー密度を維持する

噛む力や飲み込む力が低下すると、食べやすさを考えて主食の形状を変えることがあります。その場合は、主食の調理法や組み合わせを変えることで、食べやすさや栄養面を工夫する方法です。

例えば、おかゆに卵や鶏肉、豆腐を加えて雑炊や親子粥にしたり、ご飯に具材を加えて炊き込みご飯にすることができます。

主食にほかの食品を組み合わせる方法は、次の通りです。

料理 加える食品の例 取り入れ方
おかゆ卵・鶏肉・豆腐雑炊・親子粥
ご飯野菜・肉・魚など炊き込みご飯
ご飯牛乳ミルク粥
パンチーズ・目玉焼きチーズトースト・目玉焼き添え
パン卵・牛乳フレンチトースト

主食をそのまま食べるだけでなく、ほかの食品と組み合わせることがポイントです。

食べやすさと食欲を引き出す工夫

高齢になると、噛む力や飲み込む力の変化によって、食事を食べにくくなることがあります。食べにくさが続くと、食事の途中で疲れたり、食べる量が減ったりする場合もあります。

そのため、栄養価だけでなく、口に運びやすさや飲み込みやすさにも目を向けることが大切です。例えば、とろみやつなぎを使って食べ物をまとめやすくしたり、魚や肉のパサつきを抑えたりする方法があります。

また、一度に多く食べられない場合は、食べる順番を変えたり、間食を取り入れたりする方法もあります。

食べやすい調理法に加え、食事の回数を工夫することが、無理なく食事量を確保するポイントです。

とろみとつなぎを活用して食べやすくする

食材を単に小さく刻むだけでは、口の中でまとまりにくくなる場合もあります。刻み方によっては、かえって食べにくさにつながる点にも注意が必要です。

そのため、片栗粉や市販のとろみ調整剤を活用し、あんかけやとろみを付けた汁物に仕上げてみましょう。ハンバーグやつくねを作る際には、豆腐や卵、山芋などをつなぎに使うことができます。

つなぎを加えることで、料理をふんわりと柔らかく仕上げる工夫が可能です。また、パサつきやすい魚や肉は、あんかけやピカタにすることで、表面の乾燥を抑える工夫ができます。

食材の硬さやまとまりやすさに配慮し、本人が食べやすい調理方法を選ぶことが大切です。

飲み込みに不安がある場合は、食べやすさだけでなく、安全に食べられる形態かどうかも確認する必要があります。

おかずと間食で食事量を補う

一度に食べられる量が少ない場合は、3回の食事だけで必要な栄養量を補うことが難しい場合があります。そのような場合は、午前や午後に間食を取り入れ、食事以外からエネルギーやたんぱく質を補う方法があります。

間食としては、ヨーグルトやプリン、ゼリー、カスタードクリーム、チーズ、アイスクリームなどが代表的です。食べやすさを考慮しながら、本人が食べられる食品を選ぶことがポイントです。

例えば、喉ごしのよい食品を取り入れることで、食事とは別のタイミングでも栄養を補う方法につなげられるでしょう。間食を午前や午後の決まった時間に取り入れると、1日の食事回数を増やすことも可能です。

ただし、間食を取り入れる場合も、本人の食事量や食べやすさを考慮する必要があります。

市販品や栄養補助食品を活用して食事作りの負担を減らす方法

介護中の食事作りに負担を感じていませんか。毎日の食事をすべて手作りすると、介護を担うご家族の負担が大きくなりがちです。

負担を軽減するために、市販の介護食や栄養補助食品を活用してみましょう。調理の手間を抑えながら、必要な栄養を補給するための選択肢となります。

すべてを手作りすることにこだわらず、利便性の高い商品も取り入れることも大切です。無理のない方法で、長期的に安定した食生活のサポートを続けましょう。

市販品や惣菜を活用して食事作りの負担を軽減する

調理の時間と労力を抑えるには、次のような方法があります。

  • スーパーやコンビニの惣菜を一品追加する
  • 高齢者向けの宅配弁当サービスを利用する
  • レトルトのやわらか介護食や冷凍惣菜をストックしておく

手作りにこだわりすぎず市販品や宅配サービスを組み合わせることで、ご家族も無理なく食事に付き添い続けられます。

参考:公益財団法人長寿科学振興財団健康長寿ネット「高齢者の低栄養対策のための食生活とは」

栄養補助食品を活用して効率よく栄養を補う

食事量が減ってきたとき、食欲がなさそうなときは十分な栄養を摂取できていない可能性があります。そんなときは、少量でエネルギーやたんぱく質を補うことができる経口栄養補助食品を活用してみましょう。

経口栄養補助食品は、ドラッグストアや調剤薬局、通信販売などで簡単に購入できます。

代表的な商品には、株式会社明治の「明治メイバランス」や、森永乳業クリニコの「エンジョイクリミール」があります。

参考:明治 明治メイバランス

参考:森永乳業クリニコ エンジョイクリミール

どちらも1本125mlで、エネルギー200kcal、たんぱく質7.5gを摂取できる製品です。味の種類も豊富で、コーヒー味やバナナ味、コーンスープ味など、好みに合わせて選べます。

またゼリーやアイスといったタイプがあります。食欲が湧かない日の栄養補給や、食後のデザートとして取り入れることで、食事だけでは不足しがちなエネルギーやたんぱく質を補ってみませんか?

参考:明治 栄養補助食品一覧

参考:森永乳業クリニコ 栄養補助食品一覧

専門窓口を活用して親の健康状態を管理する方法

高齢の親の低栄養を防ぐには、日頃から体重の変化を確認し、必要に応じて専門家に相談することが重要です。家庭内だけで悩みを抱え込まず、地域の相談窓口や医療従事者と連携してみてください。

日々の観察を続けながら、専門家の助言を取り入れることで、適切な栄養改善につなげられます。

定期的な体重チェックを実施して栄養状態の変化を把握する

体重の変化を把握するために、週に1回程度、決まった時間帯や条件で体重を測定し、カレンダーや記録用紙に書き留める習慣をつけてみましょう。

体重が減り続けている場合や、食事中に頻繁にむせる場合は、注意が必要です。家庭内での判断だけに頼らず、身体の変化や栄養不足の兆候を早めに把握することが大切です。

体重やむせ込みの頻度などを定期的に記録しておけば、医師や専門家に相談する際に、状況を正確に伝えやすくなります。

ただし、細かく記録することが負担になる場合は、簡単な方法でも構いません。

例えば、食事中のむせ込みの様子を「○(問題なし)」「△(少し食べづらそう)」「×(たくさんむせた)」のように記号で分類し、カレンダーに記録する方法があります。大切なのは、細かく記録することよりも、日々の変化を継続して把握することです。

無理なく続けられる方法で記録を残し、必要に応じて医師や専門家に相談しましょう。

専門窓口を活用して専門家から適切なアドバイスを受ける

高齢者の食事や栄養、介護に関する悩みは、地域の専門窓口で相談できます。

具体的な相談先として、お住まいの自治体にある「地域包括支援センター」が挙げられます。また、公益社団法人日本栄養士会が運営する「認定栄養ケア・ステーション」も相談先の一つです。

相談先・窓口 検索手順
地域包括支援センター(各市区町村)お住まいの「自治体名+地域包括支援センター」で検索するか、厚生労働省の案内ページから最寄りの窓口を確認する
栄養ケア・ステーション(日本栄養士会)栄養ケア・ステーションを探すを開き、「地図から探す」または「都道府県一覧」からお近くの相談窓口を検索する

管理栄養士や保健師などの専門職に相談すれば、身体の状態に応じた献立や栄養についてアドバイスを受けられます。

また、かかりつけ医や歯科医師、調剤薬局の薬剤師にも、日頃の食事の様子を伝えておくことが重要です。

専門窓口や医療従事者と連携しながら、親の身体の状態に合わせて、1人で抱え込まず、無理のない範囲で食生活を支えていきましょう!

執筆者

池田実咲

管理栄養士/高齢者施設・栄養ケアマネジメント

管理栄養士です。管理栄養士専攻の4年制大学を卒業して国家資格を取得し、現在は高齢者施設で栄養ケアマネジメントを担当しています。入居者の栄養状態の評価とケア計画の作成が主な業務です。直営厨房での大量調理も2年経験しました。

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