栄養

高齢者のフレイル予防に必要な栄養とは?毎日の食事で今日から始める栄養改善

池田実咲

「最近、食が細くなった・・・年のせいかな?」と疑問や不安に感じていませんか?食欲の低下はフレイルのサインで、放置すると要介護リスクが高くなります。

今回は老人福祉施設で働く管理栄養士がフレイル予防に必要な栄養素と簡単にできる食事改善のコツを徹底解説!専門知識に基づいた工夫を知ることで元気に過ごす食習慣をスタート・維持ができます。毎日の食事から楽しくフレイル予防を始めて行きましょう♪

1.フレイルってなに?栄養不足による引き起こすリスク

年齢を重ねるとともに、「なんだか疲れやすくなった」「歩くのが遅くなった」と感じることはありませんか?それは年のせいではなくフレイルのサインかもしれません。なぜ食が細くなるとフレイルが加速してしまうのでしょうか。

ここではフレイルの基礎知識から栄養不足との関係、フレイルを見極めるチェックポイントを解説します。

1. フレイルについての基礎知識

フレイルとは、心身が健康で何でも自分でできる(自立した状態)から日常生活に手助けが必要な状態(要介護状態)へ移行する中間のステップ、つまり衰えが出始めた状態を指します。

フレイルは、単一の原因ではなく、「身体」「精神」「社会との関わり」という3つの側面が互いに影響し合うことで発生します。

要因詳細
身体的筋力や歩行速度の低下体重減少低栄養心不全・呼吸器疾患などの慢性疾患による疲れやすさ
精神的・心理的認知機能の低下抑うつ症状活気の低下
社会的定年退職等による活動量・交流機会の減少独居などの家族構成収入の変化

これらの3つの要因のうち1つでも低下すると他の要素にも影響を及ぼします。

例えば「外出が減る(社会環境)→筋力が落ちる(身体)→気力も落ちる(精神)といった悪循環に陥ることで症状が本格化していくのです。

2. 食が細くなることでフレイルが加速する理由

加齢とともに、食が細くなると、身体に十分なエネルギ-や筋肉のもととなるタンパク質が行き渡らず、低栄養状態になります。エネルギーが不足すると身体は筋肉を分解して補おうとするため、筋力や体力が急速に低下します。

そのため、「動くのが面倒」「歩くのが疲れる」と感じ、活動量が減りさらにお腹が空きにくくなり食が細くなるという悪循環が回りはじめてしまうのです。このように一度食欲低下から悪循環に入ると一気に全身がおとろえが進んでしまうため、注意が必要です。

3. フレイルを見極めるチェックポイント

フレイルの診断には、統一された基準はありませんが、主要な診断基準としてCHS基準(Cardiovascular Health Study基準 )があります。それを日本版に修正した基準が提唱され、以下の5つの基準のうち3つ以上当てはまるとフレイルと判断できます。

症状詳細
体重減少6ヶ月で2kg以上の意図しない体重減少
筋力低下(握力の低下) ペットボトルの蓋が開けにくくなった握力 男性<28kg、女性<18kg間
疲労感(疲れやすさ)ここ2週間ほど、特に理由もないのに「なんだか疲れた」と感じることがある
歩行速度横断歩道を青信号のうちに渡りきるのが難しくなってきた
身体活動量の低下(運動不足)軽い運動、体操、スポーツなどを週に1回もしていない

2.フレイル予防のために知っておきたい食事で心がける3原則

フレイルは早期に対策をすれば、元の健康な状態に戻すことができます。その予防・改善において最も土台となるのが毎日の食事です。一方で、「特別なものを食べなければならないの?」と感じるかもしれません。

しかし、大切なのは日々のちょっとした意識・工夫です。毎日の食事を無理なく、楽しみながら、身心の元気を守るため「心がける3原則」をまとめました。ご自身やご家族の普段の食習慣と照らし合わせながらチェックしてみましょう。

1. 1日3食バランスよく食べるために欠食・偏食に気をつける

フレイル予防において、1日3食バランス良く食べることは低栄養を防ぐために極めて重要です。なぜなら、食事の回数や量が減って欠食が続くと、体に必要なエネルギーや栄養素が不足し、無自覚のうちに低栄養状態へ陥ってしまうからです。

フレイルを防ぐためには、毎日3食しっかり食べる習慣をつけ、その中で「1日2回以上、主食・主菜・副菜を組み合わせて食べる」意識を持ちましょう。一度にたくさんの食事量を食べられない場合は、おやつを工夫して無理なく栄養を補う方法が効果的です。

例えば、ようかんにチーズケーキを組み合わせたり、お茶を豆乳ラテに変えてみましょう。プロセスチーズやヨーグルトなど、おやつでタンパク質を補うと、不足しがちな栄養を手軽に摂ることができます。

2. 体重や食欲の変化に気づくために日々気にかける

体重の変化や食事の取り方はフレイルのサインに気づくための大切な指標です。年齢とともに「おいしいものが食べられなくなったなぁ」「体重が以前より減ってきた・・・」と感じることはありませんか?

特に先ほど記載した「6ヶ月間で2~3kg以上の意図しない体重減少」や「半年前に比べて固いものが食べにくくなった」「お茶や汁物でむせることが増えた」と感じる場合は要注意です。

病気ではない「やせ」は放置すると要介護状態を招くハイリスクな状態につながる可能性があるのです。日頃からこまめに体重を測定する習慣をつけ、食欲や体調の変化を見逃さないようにしましょう。早期に変化に気づくことが予防・改善に向けた第一歩となるのです。

3. 孤食を防ぎ誰かと一緒に楽しく食べる意識を心がける

誰かと一緒に会話を楽しみながら食事をする「共食(きょうしょく)」はフレイル予防において非常に大切なポイントです。実態として、高齢者の約30~40%が3食ともほぼ毎日1人で食事をとっているという2020年に実施した調査データがあります。

参考:高齢者と食とコミュニケーション

「孤食(こしょく)」が続くと、食欲不振を招きやすく、栄養状態の不良からフレイルに至る危険性を高めてしまいます。

一方、家族や友人と食卓を囲むと、自然と食事が美味しく感じることができ、食事量が増える効果があります。また食事による味覚、嗅覚、触覚への刺激に加え、他者との会話を楽しむことにより口の動きや頭の運動にもつながり心身の活力を保つことにもつながるのです。

一人暮らしなどで毎日誰かと食べることが難しい場合でも、地域における「通いの場」である共食の機会を活用し、趣味やボランティアといった「社会参加」を意識して社会とのつながりをつくっていきましょう。

3. フレイル予防のために摂りたい栄養素3選

レイル予防の基本は毎日の食事ですが、お腹を満たすだけでなくどのような栄養素をどう摂るかがとても重要です。特に、筋肉や骨の衰えを防ぎ、エネルギーを効率よく生み出すためには欠かせない栄養素があります。

ここでは、フレイル予防のために優先して意識して欲しい3つの主要な栄養素とその役割について分かりやすく解説します。

1. 筋肉の分解を食い止める糖質と脂質

タンパク質が筋肉を作る材料であるのに対し、糖質(炭水化物)と脂質は身体を動かす主な「エネルギー源」となります。エネルギー摂取量が不足すると、身体は不足分をおぎなうために自らの筋肉を分解してエネルギーを作り出そうとします。

これが筋肉量を減少させ、フレイルを進行させる大きな要因になりかねません。過度な制限をせず、適量のご飯や普段の料理に使う油を食事に取り入れ、十分なエネルギーを確保しましょう。

2. 筋肉を維持・強化するタンパク質

タンパク質は筋肉、皮膚、内臓などを構成する身体作りに欠かせない重要な栄養素です。年齢を重ねると若い頃に比べ、食事から筋肉が作りにくくなってしまいます。そのため意識して食べることが大切です。

肉、魚、卵、大豆製品、乳製品など多用な食品をバランス良く食事に取り入れましょう。さらに、スクワットなどの簡単な筋力トレーニングを行うことで、筋肉が減るのを防ぎ、元気に歩き続ける力を保つことができます。

3. 骨や歯を丈夫にし、元気を支えるカルシウム・ビタミンD

身体をしっかり支える骨の健康維持には、カルシウムとビタミンDの組み合せが欠かせません。骨の主成分であるカルシウムに加え、その吸収率を高めて骨への定着を促すビタミンDを同時に摂ることで、骨を丈夫にし、転倒による骨折を防ぐ効果が期待できます。

牛乳、小魚、きのこ類を食事に取り入れるとともに、日光浴を行うことで体内のビタミンDを合成を促すことも効果的です。

4. 無理なく続けるために毎日の食事改善ポイント

必要な栄養素がわかっても「毎日完璧なメニューを作るのは大変だよ・・・」と感じてしまうかもしれません。しかし、フレイル予防で最も大切なのは無理なく長く継続することです。

特別な料理を作ろうとしなくても、日々のちょっとした習慣、選び方のコツを押さえることで栄養価、食べやすさは格段にアップします。

今日からすぐ試すことができる食事改善のポイントを押さえていきましょう!

1. 1日3食しっかり食べるために決まった時間に食べる

身体を動かす元気を保つためには、毎日決まった時間に3食しっかりと食べることがとても大切です。年齢を重ねるとお腹が空きにくくなったり生活の様子が変わったりして、食事の回数や量が減ってしまいがちになります。

しかし、食事を抜いて1日の食事が2回以下になると、身体に必要な栄養が足りなくなり、筋肉が落ちやすくなってしまうので注意が必要です。

2. 手軽に栄養価をアップするためにプラス一品をつける

毎回の食事をすべて一から手作りするのは体力を使うためとても大変です。そこでおすすめなのが、いつものご飯に、調理しなくてもすぐに食べることができる「もう一品」を足すだけの工夫です。

厚生労働省が定めているのガイドラインでも、手作りすることにこだわらず、市販のお惣菜、レトルト食品、配食弁当などを上手に頼ることが勧められています。

参考:通いの場 【食べて元気にフレイルを予防するために】

例えば、ごはんとお味噌汁だけの食卓には、納豆や豆腐、生卵などをどれか1つ添えるだけで、手軽にたんぱく質を補うことができます。また、食パンだけで済ませる場合は、牛乳やヨーグルト、チーズなどを合わせると、エネルギーを効率よく高めることができるのです。

さらに、冷凍の野菜やカット野菜、缶詰などを活用すれば、下ごしらえの手間をかけずに野菜のおかずを用意できるでしょう。

3. 食欲がない・噛む力が弱いときは喉ごしがいいものや柔らかいものを摂る

噛む力や飲み込む力が弱くなってきたと感じた場合は、無理をして固い物を食べず、ご自身の力にあった柔らかい食事を選びましょう。食欲がない日でも喉を通りやすい料理として、よく煮たお野菜や煮魚、お豆腐、茶碗蒸し、おかゆ、ゼリーなどがあげられます。

東京都西多摩保健所の試料では、食材をやわらかく煮る工夫、一口大に小さく切る工夫、ミキサーにかける工夫が紹介されています。

参考:東京都西多摩保健所 【高齢者にやさしい簡単料理レシピ】

5. 継続するために家族や周囲ができるサポート

フレイル予防はご本人の努力だけではなく、ご家族や周囲のあたたかいサポートがあってこそ長続きします。特に孤食(一人での食事)や食事の準備の手間は食欲低下、栄養不足につながる大きなハードルとなってしまいます。

周囲が優しく寄り添い、一緒に楽しみながら食事改善を継続するための具体的なサポート方法・コツを押さえましょう。

1. 一人暮らしでの孤食を防ぐ。楽しく食べるポイント

一人暮らしでは「孤食」が増えやすく、食欲低下や栄養偏りのリスクが高まります。食事が味気なく感じられると、食べる量自体が減ってしまうケースも少なくありません。

孤食を防ぐには、家族や友人と定期的に食卓を囲む機会を作ることが大切です。遠方に住んでいる場合は、電話やオンライン通話で会話しながら一緒に食事を楽しむことも効果的です。

2. 常備しておくと便利な食品

毎食一から料理を作るのは手間がかかり、食事の準備自体が大きな負担になるでしょう。そのため、手軽にたんぱく質やエネルギーを補給で食品をストックしておくと安心です。

例えば、魚の缶詰、納豆、豆腐、冷凍野菜などは調理の手間がかかりません。包丁を使わずお皿に出すだけで手軽に1品増やせる工夫を取り入れてみましょう。

3. 異変に気づいたら?医師や管理栄養士に相談するタイミング

「最近痩せてきた」「固いものが噛みにくい」と感じたら注意が必要です。これらはフレイルやオーラルフレイル(お口の機能低下)の重要なサインです。

意図しない体重減少や食欲不振が続く場合、早めに主治医、管理栄養士、地域包括支援センターへ相談しましょう。

たとえばこんな窓口で相談できます。

相談したい内容相談先・窓口検索手順
介護や生活全般の悩み(どこに相談すべきか 分からないときも)地域包括支援センター(各市区町村)・お住まいの「自治体名+地域包括支援センター」で検索する・厚生労働省の案内ページから最寄りの窓口を確認する
食事・栄養・食生活の悩み栄養ケア・ステーション(日本栄養士会)栄養ケア・ステーションを探すを開き、「地図から探す」又は「都道府県一覧」からお近くの相談窓口を検索する
口の機能・噛む力の悩みかかりつけ歯科医(日本歯科医師会)全国の歯医者さん検索からお近くの歯科医院を検索する

専門家による食事指導や適切なサポートを受けることが早期改善につながります。

6. 毎日の食事を楽しみながらフレイル予防しましょう!

フレイル予防は決して我慢するものでも、難しい食事制限でもありません。一番大切なことは「美味しく、楽しく、毎日の食事をしっかりと味わう」ことです。

身体によい栄養を取り入れながら、大切な人と食卓を囲む時間を大切にしましょう。まずは今日の一食からできる工夫を取り入れ、いつまでも元気に自分らしい毎日を過ごしていきましょう!

執筆者

池田実咲

管理栄養士/高齢者施設・栄養ケアマネジメント

管理栄養士。管理栄養士専攻の4年制大学を卒業して国家資格を取得し、現在は高齢者施設で栄養ケアマネジメントを担当している。入居者の栄養状態の評価とケア計画の作成が主な業務。直営厨房での大量調理の経験も2年ある。

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