看護

申し送りで伝え漏れが続く人に一度試してほしい4つの視点

メディカルライブラリー編集部

日勤終わりの交替時、手元のメモを見つめながら必死に報告したものの、先輩から「結局どうしてほしいの?」と指摘されて言葉に詰まってしまうことがあります。

伝えたい患者情報が多いほど頭の中が整理できなくなり、申し送りに時間がかかるうえ、重要な変化の伝え漏れも生じがちです。

この記事を読むことで、「時間軸」「優先度」「根拠」「引き継ぎ先」という4つの視点を活用し、短時間で過不足なく情報を引き継ぐ実践法が分かります。

伝え漏れを防ぐ1つ目の視点「時間軸」

病棟の申し送りで患者の状態変化を正確に伝えるには「時間軸」の整理が欠かせません。出来事を発生順に整理できていないと、聞き手は時系列を頭で再構築する必要が生じ理解に時間がかかります。いつから症状が始まったかが曖昧な報告は、処置の遅れに直結するリスクがあるのです。勤務中の変化を点ではなく線で捉え、時間の経過に沿って観察項目を提示する工夫が求められます。患者の訴えの変化を過去から現在、そして未来へつなげて整理する姿勢が大切です。まずは勤務帯の中で起きた出来事を時系列に並べ替える習慣を身につけましょう。情報の抜け落ちを防ぎ、相手に伝わりやすい引き継ぎの土台が完成します。

時系列で患者の状態変化を整理する重要性

患者の症状変化を時系列で追うことは、病状の悪化傾向を早期に察知するために不可欠です。単に「発熱がありました」と伝えるだけでは、一過性のものか継続的な増悪なのか判断がつきません。

  • 発症時刻とピーク時の症状
  • 実施した看護介入とその後の経過

上記のように時間の経過に沿って事実を並べると、介入の効果が把握できます。時間の流れに沿った観察結果の提示は、看護師間で思考を共有し次のケア方針を迅速に決める土台となるのです。

時間軸を意識した申し送りの良い例と悪い例

時間軸の有無による申し送りの違いを比較してみましょう。

悪い例:
「10時に熱が38.2度あって解熱剤を使いました。現在は37.1度です。あ、そういえば朝食時にも少し寒気を訴えていました。」

良い例:
「8時の朝食時に寒気があり、10時に38.2度まで発熱したため座薬を使用しました。12的には37.1度まで解熱し経過観察中です。」

悪い例は情報が前後して状況把握に時間がかかります。良い例のように時系列順に伝えることで、解熱剤の効果と経過が明確に伝わるのです。

情報の精査に役立つ2つ目の視点「優先度」

膨大な看護情報から伝えるべき内容を絞る際は「優先度」の視点で整理する必要があります。病棟業務では予期せぬ出来事が頻繁に起きるため、すべての報告を均等に行う時間はありません。引き継ぎの場では、生命の危険に直結する変化や即座に対処すべき事項を最優先で伝えるべきです。ルーチンケアの報告に時間を取られ、緊急度の高い情報の伝達が最後になると対応の遅れを引き起こす恐れがあります。患者の安全を守るには、情報の緊急性と重要度を見極める姿勢が欠かせません。伝えるべき情報の優先順位を整理してから申し送りに臨むことで、短時間で過不足のない引き継ぎが実現します。聞き手も重要な業務から着手できるようになり、チーム全体の安全管理につながるのです。

緊急性と重要度で伝える順序を整理する方法

情報を整理する際は、緊急性と重要度の2軸で分類する手法が効果的です。真っ先に伝えるべきなのは、バイタルサインの異常など「緊急かつ重要」な情報といえます。

  • 緊急かつ重要:意識レベルの低下、収縮期血圧の急降下など
  • 重要だが緊急ではない:明日の検査前処置の確認、退院調整の進捗

優先度の高い情報から提示すると、相手は即座に危険を察知できます。業務の優先順位を決定づける情報の選別が、確実な引き継ぎを可能にする鍵です。

優先度を考慮した申し送りの良い例と悪い例

優先度の整理ができているかで相手の受け取り方は変わります。

悪い例:
「清拭と洗髪は終了しました。点滴も投与済みです。あと15時に突然の胸痛訴えがあり心電図をとっています。」

良い例:
15時に突然の胸痛訴えがあり心電図を実施した件を最優先でお伝えします。なお予定されていた清拭や点滴は完了しました。」

悪い例は危険な胸痛の情報が最後に回されています。良い例では緊急事態を冒頭に配置したため、引き継ぎ後すぐに心電図結果の確認へ動ける構成です。

判断理由を明確にする3つ目の視点「根拠」

客観的なデータや判断理由を示す「根拠」は、申し送りの信頼性を高める3つ目の視点です。「患者の状態が悪そうです」といった主観的な印象だけでは、引き継いだ看護師は何を基準に観察すべきか判断に迷います。看護現場では、患者の訴えという主観的情報と、バイタルサインなどの客観的データを組み合わせて状況を評価する思考が不可欠です。ここで役立つのが、SBARなどの視点を取り入れた思考整理プロセスといえます。用語の解説に終始せず、事実と評価を区別して伝える技術を意識しましょう。客観的根拠に基づいた評価を言葉にして伝える姿勢を持つと、申し送りの説得力が格段に増します。次の勤務者が根拠を持って判断できる環境を整えましょう。

SBARの枠組みで事実と評価を整理するコツ

申し送りで事実と推論が混ざると相手に誤解を与えかねません。情報を整理する際は、客観的事実と看護師の評価を分けて伝えるコツが必要です。

  • 事実:バイタルサイン、検査データ、患者の発言
  • 評価・提案:データの変動から推測されるリスクと介入案

観察データと臨床的判断を区別して話す構造を意識してください。数値や根拠を提示したうえで考えを添えると、引き継ぎを受けた看護師も迅速に次のアクションを判断できます。

根拠を明確に伝える申し送りの良い例と悪い例

根拠が明確な申し送りと曖昧なものの対比を確認してみましょう。

悪い例:
「なんだか酸素化が悪そうでした。様子がおかしいので注意して見ておいてください。」

良い例:
「SpO2が平時の98%から92%へ低下しており、労作時の呼吸苦を伴うため酸素投与の検討が必要です。」

悪い例は看護師の感覚に依存しており客観的な基準が見えません。良い例のように数値と観察事実を提示すれば、緊急度と必要な対応策の根拠が明確に伝わります。

次の勤務へつなぐ4つ目の視点「引き継ぎ先」

申し送りのゴールは、次の勤務者がスムーズかつ安全に看護業務を開始できる状態を作ることです。そのためには「引き継ぎ先」の看護師が何をすべきかという行動に焦点を当てた伝え方が求められます。実施したケアの報告だけで満足すると、相手は次に何をすべきか判断に困るはずです。次の勤務帯で予定されている処置、継続すべき観察項目、医師への報告タイミングなどを具体的に提示する配慮が必要となります。相手の立場に立ち、次の数時間で発生しそうな変化を先回りして伝える意識が大切です。指示出しや依頼事項を曖昧にせず、行動レベルまで落とし込んで伝えましょう。引き継ぎ先が取るべき行動を具体化して伝える工夫により、勤務交代時の申し送り漏れを防止できます。

相手が取るべき行動を明確に伝えるポイント

次の勤務者がすぐに動けるようにするには、タスクを具体的に指定する伝え方が効果的です。「観察をお願いします」と伝えるのではなく、具体条件を設定して引き継ぎます。

  • いつ:次回検温時の14時に
  • 何を:ドレーン排液の性状と量を
  • どうするか:血性で100ml以上なら医師へ連絡

相手の次のアクションを条件付きで具体化する伝え方を取り入れましょう。指示が明確であれば受け持ち看護師は迷わず迅速に対応できます。

引き継ぎ先を意識した申し送りの良い例と悪い例

引き継ぎ先の行動を意識した文例を比較します。

悪い例:
「血糖値が高めなので気を付けてみてください。夕食前の指示も確認しておいてくださいね。」

良い例:
「昼食前の血糖値が250mg/dLでした。夕食前に200mg/dLを超えていれば指示通りインスリン2単位を皮下注射してください。」

悪い例は具体的な数値や処置が不明確で確認の手間が生じます。良い例は条件と行動が特定されているため、受け取った看護師が迷わず確実にケアを実行できる構成です。

まとめ

申し送りでの伝え漏れを防ぎ、短時間で質の高い引き継ぎを行うには今回紹介した4つの視点が役立ちます。時間軸で変化を捉え、優先度で順序を決め、根拠をもってアセスメントを語り、引き継ぎ先の行動を明確に提示するプロセスが重要です。これらを意識すると情報の整理が格段にしやすくなり、聞き手にとっても理解しやすい申し送りが実現します。申し送りに時間がかかる悩みや伝え漏れの不安を抱えている方は、まずは1つの視点から日々の業務に取り入れてみてください。自分の申し送りを振り返りながら実践を重ねることが上達への近道です。院内ルールが存在する場合は基準を確認した上で工夫を深めましょう。4つの視点を活用した体系的な引き継ぎの実践が、確実な看護と自分自身の自信につながります。

この記事はメディカルライブラリー編集部が作成しました。 編集方針

記事URLをコピーしました